『怒りの獣神』がプロレスの会場で流れ続けているのは凄いこと
ラジオ日本・清野茂樹の『真夜中のハーリー&レイス』にアニメ演出家の鹿島典夫が出演。
鹿島はサンライズ出身のベテラン演出家で、演出『無敵ロボトライダーG7』(1980年)、劇場版アニメ『クラッシャージョウ』(1983年)、監督作品に『ダーティペア』(1985年)、『獣神ライガー』(1989年)など。近年では『マクロスF』(2008年)の絵コンテなどを手掛けた。
新日本プロレス、獣神サンダー・ライガーが来年1月に引退を表明、9月の「サンライズフェスティバル2019風月」で『獣神ライガー』の上映会の開催など、何かと話題の『獣神ライガー』ついて聞いた。
『怒りの獣神』は「燃える燃える」というイメージでお願いしました
【清野茂樹】(『怒りの獣神』を聴いて)この曲を聴くとどうですか? 当時のことを思い出すんじゃないですか?
【鹿島典夫】やっぱり若かった。自分自身も若かったし、イメージとしては炎のイメージなんですよね。
【清野茂樹】はいはい。
【鹿島典夫】いわゆる「燃える燃える」というそのイメージで作った、お願いした曲ですね。
【清野茂樹】歌っている弘妃由美さんという方は、入ってきたときからご存知だったんですか?
【鹿島典夫】いえ、全くの新人の方で、オーディションを何人か受けてその中の1人として、とても素直な歌い方をなさっていた方なので。
【清野茂樹】へえ、当時お幾つくらいだったんですかね?
【鹿島典夫】たぶん18〜19歳です。
【清野茂樹】そうですか、新人として、オーディションを受けに来て。印象というのは覚えていることはありますか?
【鹿島典夫】すごい素朴ないいお嬢さんという感じですね。いいところのお嬢さん風でしたね。
【清野茂樹】聞くところによると平尾昌晃さんのところから出て来られたって。ちゃんと由緒正しいところからね…。ちゃんとした教育を受けてという感じがします。
【清野茂樹】でも今もプロレスの会場では流れ続けているというね。凄いですね。
【鹿島典夫】凄いです。
永井豪先生から「王道のロボットモノを作りたい」と
【清野茂樹】アニメの長さを完全に超えているという、ねぇ。「獣神サンダー・ライガー」という名前がプロレスファンの間ではお馴染みです。元々は「獣神ライガー」というアニメですよね。この監督を鹿島さんがなさっていた。
【鹿島典夫】はい、やってました。
【清野茂樹】始まるときのことって覚えてますか?
【鹿島典夫】かなり昔のことなので…うろ覚えのところもありますけど。永井(豪)さんが、このキャラクターの「獣神ライガー」というモデルを作ってくだったんですね。それと「バイオアーマード」という言葉も永井さん発信で、こういう形を作られて「こういうものがあるので、何かストーリーを作れませんか?みんなで作りましょうよ」というところからスタートしたんですね。
【清野茂樹】へえ、放送は決まっていたんですか?
【鹿島典夫】放送は決まっていました。
【清野茂樹】で枠も決まってて。そこに鹿島さんに白羽の矢が立って「じゃあやろう」とチームができるわけですよね。どうでした?始まるまでの作業というのは。
【鹿島典夫】一番あったのは、やっぱり永井先生とご相談して、永井先生の意見がどうであるか「自分が演出するこういうプランがあるんだけど、こういう形でどうでしょう?」と、やりたいんですけど。とそれをどう永井先生が判断してくれるかということが、一番まず大きなところだったですね。
【清野茂樹】やっぱり原作者の意向というのはもの凄い大事なわけですね。
【鹿島典夫】大事ですね。僕らも永井さんって、当時でもスターですから。
【清野茂樹】もう『マジンガーZ』をはじめバンバンヒットをお持ちですからね。
【鹿島典夫】だから恐々震えながら(笑)「どうだろう?」って感じで永井さんに会ったんですけど。
【清野茂樹】そういう時ってご自宅に行くんですか?
【鹿島典夫】永井先生のスタジオがありましたので、永井豪のスタジオが確かあった…そこに行かしてもらって、高田馬場だったかなあ。早稲田とかその辺にあったと思うんですけど、そこに行かせていただいて、はじめて会って。結構「どうなんだろう…」って感じ見ていたら、凄い童顔でニコニコって出てきて「ヨッ!」って感じで握手してくださって。
で「こういう形で、こういう風な仕事の方向性として、要するに「王道のロボットものを作りたい、メカモノを作りたい」と。「子供が観ていてもわかる正義が勝つという、そういう縮図の中でのものを作って進めたいんだ」という話をしたときに永井さんが「わかりました。あとはお任せします。どうぞ作ってください」と本当に簡単におっしゃってくださったんですよ。
【清野茂樹】ほお、2つ返事で。
【鹿島典夫】はい、でストーリーは自由にキャラクターの位置づけとか、そういうのも自由にやらせて貰いました。
【清野茂樹】その解釈というのは、キャラクターがあったしても、そのお話の解釈というのはもう自由だったんですか?アニメは。
【鹿島典夫】自由でしたね。永井先生は「こうしろ」とか「ああしろ」とかという指図なしで、作らさせていただいたので演出としては冥利に尽きます。(つづく)
まとめ
ここからは鹿島さんのアニメ業界あるある話。「ライガーは43話あったが、各話担当の演出が優秀で番組が『落ちる』ことはなかった」と証言。当時からサンライズは「落とす」ということはなかったとも語っていました。「落ちた」場合は総集編で、こちらは現在と変わらないという。
後半はサンライズの話、プロレスラー獣神ライガー誕生秘話、そしてなぜか大山倍達が登場します。
この番組の内容は「真夜中のハーリー&レイス」の公式ページからポッドキャストでも聴けます。延長線も面白いのでぜひ聴いてみてください。(放送から約2ヶ月限定公開 2019年11月頃まで)
「真夜中のハーリー&レイス」