ジャズピアニスト・上原ひろみがJ-WAVEの番組「SAPPORO BEER OTOAJITO」に出演。最近聴いている音楽や、10年ぶりのピアノ・ソロアルバム『Spectrum』について語った。
新作はジョージ・ルーカス所有のスタジオで録音
【クリス・ペプラー】お久しぶりだよね。
【上原ひろみ】お久しぶりですね。
【クリス・ペプラー】1年以上ぐらいですか。
【上原ひろみ】お誕生会以来。
【クリス・ペプラー】ああ、そうか。私のね、あのぐちゃぐちゃな還暦パーティーにお越しいただきまして。飛び入り参加もしていただきましたけど。
【上原ひろみ】一緒に演奏しましたね。
【クリス・ペプラー】恐れ多くもすいませんね。本当にもう。ひろみちゃんは、何とこの番組たぶん最多だよね。5回目だもん。
【上原ひろみ】来すぎですかね(笑)。
【クリス・ペプラー】全然、全然。たぶん2011年から来てるんじゃないかな。
【クリス・ペプラー】最近はどんな感じですか活動は? 制作はNYでやっているって感じなの?
【上原ひろみ】制作は、レコーディング自体は今回サンフランシスコの北にあるSkywalker Soundというジョージ・ルーカスが持っているスタジオでやって。
そこのスタジオの人がライヴを観に来てくれて、トリオをやっている頃に来てくださって、「そのスタジオでぜひレコーディングをしませんか」って言っていただいて。
でもなかなか日程が、そのスタジオの空き状況と自分の空いているところが合わなかったんですけど、今回はじめて合ったので「ぜひ」と言って、いわゆる映画を撮るスコアリングステージというか、本当にジョン・ウィリアムズが映画を観ながらオケを振るところを。
【クリス・ペプラー】『スター・ウォーズ』(STAR WARS)ができたところですよね。
【上原ひろみ】近年では『ブラックパンサー』(Black Panther)とかをレコーディングしているところで、贅沢にピアノ一台だけ置いてレコーディングして。
【クリス・ペプラー】これもひろみちゃんスペシャルの、ヤマハのデカいグランドをドンと入れ…。
【上原ひろみ】ピアノもポツンと見えるくらいの、凄い大きいスタジオで音が凄い良くて、ホールに近い抜けの凄くいい、音が天井から降ってくるような場所でしたね。
聴いていると涙が出てくるスフィアン・スティーヴンスとブラッド・メルドー
【クリス・ペプラー】最近はどんなのを個人的には聴いてるの?
【上原ひろみ】最近1番ハマっているというか、全開来た時からの発見はスフィアン・スティーヴンス(Sufjan Stevens)という、ギタリスト・シンガーソングライター。
その人の『Carrie & Lowell』というアルバムを聴いて、もう何か心に来るというか、凄くエモーショナルで、何なんだろう。
凄く不思議な雰囲気の、何か聴いていると涙が出てきちゃうような「映画の音楽っぽいな」と最初凄く思って、情景が浮かぶ。色々調べていったら、日本では去年公開だったのかな。『君の名前で僕を呼んで』という映画の曲をやっていたりとか。声も素敵だし、曲が凄く1番聴いたかな。
映画『君の名前で僕を呼んで』
【クリス・ペプラー】うん、そうなんだ。で、このブラッド・メルドー(Brad Mehldau)はどんな人なんですか?
【上原ひろみ】ブラッド・メルドーはジャズ・ピアニストで本当にずっと彼のデビュー作からずっと好きで聴いているんですけど、彼がパンチ・ブラザーズ(PUNCH BROTHERS)のクリス・シーリ(Chris Thile)とコラボレーションしたデュエットのアルバム。
これも心に来るというか、何か聴いてたら泣けちゃうというというか…。
【クリス・ペプラー】そうか。エモーショナルになる曲に今ハマってるのかな。
【上原ひろみ】うーん、何なんだろう。凄くスッと心を持っていかれるていうか。これも凄くマンドリンとピアノのシンプルな編成なんだけど、ブラッド・メルドーがとにかくタイムがいい、タイム感が。
【クリス・ペプラー】へえ、そうなんだ。
【上原ひろみ】だからピアノだけだけど、ドラムが聴こえるというか。ちゃんとこの、グルーヴがずっと気持ちのいいグルーヴがずっとあって。
【クリス・ペプラー】へえ、それは何となく鍵盤にゴーストみたいなのが出るのではなくて、ただタイムが気持ちいいという感じなんだ。
【上原ひろみ】彼のソロのコンサートとかも何回か聴いたことがあるけれど、凄くタイムが良くて。
凄く色々なプロジェクトをやっている方で、結構フェスとかでダブルビルになることも多くて、何度かステージをシェアしたこともあるんだけど、やっぱりどのプロジェクトで観てもドラムがいるプロジェクトでも、彼のなかの確固たるタイム感みたいなものがあって。
でメルドーが、マーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)という人とやっているドラムとピアノのデュエットのプロジェクトでメリアーナ(Mehliana)というのもあって。
それも彼はどちらかというと、エレクトリニカでオルガンとか弾いたり、シンセ弾いたりするプロジェクトがあって、それも凄い面白くて。アルバムは出ていないんだけどフェス限定で、ここにジョン・スコフィールドという人が混ざったScomehlianaというプロジェクトもあって。
本当に色々なプロジェクトをやってて、いつも何か作品を出すたびに楽しみな人で、最新作がこの『Finding Gabriel』っていう作品で、結構ニューヨークの若手の、若手といっても30代〜40代のミュージシャンと一緒にやってるやつなんだけど、それもサウンドが凄く面白い。
【クリス・ペプラー】でも、さっきジョンスコの話が出たけれど、ひろみちゃんジョンスコが1番好きなんだよねギタリストで。
【上原ひろみ】うーん、1番好きな人ってたくさんいるけど、でもかなり好きですね。
【クリス・ペプラー】ジョンスコとは演ったことあるの?
【上原ひろみ】無いです。
【クリス・ペプラー】でも、聴くのと一緒に演る、ジョイントするのはやっぱり違うのかな? 聴いて素晴らしいと思う人とは一緒にやってみたいとは、それが自動的にそういうことにはならないんでしょ? 聴いてて「わっスゲえいいな」と思って「よし、この人と何か演りたい」ふうにはオートマティックにはならない?
【上原ひろみ】うーん、聴いて素晴らしくても、じゃあその人との自分が化学反応があるかというはまた違うところで、だから誰でも自分というふうには考えるわけでなくて、それはまた違うことかな。(つづく)
SAPPORO BEER OTOAJITO – J-Wave