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町山智浩が解説「実はツラい内容『スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」はアメリカ賛歌ではない』」

投稿日:2019年9月24日 更新日:

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」で映画評論家・町山智浩が、ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen )にインスピレーションを受けたといわれる映画『ブラインデッド・バイ・ザ・ライト』とともに「本当は怖いブルース・スプリングスティーンの歌詞」というテーマで語った。

とかくその内容を誤解されがちな1984年の大ヒット曲「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」(Born in the U.S.A.)について。

本当は怖い歌詞が多い?ブルース・スプリングスティーンの曲

【宇多丸】はい皆さん一度はなんかしらの形、どっかしらで耳にしたことがある筈だと思いますけど、ブルース・スプリングスティーンで「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」から聴いていただいてますが、本日は何故ブルース・スプリングスティーン特集をやろうと思ったんですか?

【町山智浩】今日はボスことブルース・スプリングスティーンが70年前に生まれた日なんです。
【宇多丸】ああ誕生日なんだ。おめでとうございますボス!

【町山智浩】そうなんですよ、それとですねアメリカとイギリスの方で『ブラインデッド・バイ・ザ・ライト』というタイトルの、ブルース・スプリングスティーンに衝撃を受けてジャーナリストを目指した実在の人物の伝記映画が公開されまして。

それでひどく感動したのが理由で、ただブルース・スプリングスティーンの歌って相当誤解されているので…。今日はですね「本当は怖いブルース・スプリングスティーンの歌詞の世界」というのを、話させて欲しいなと。

雰囲気は翼賛的なイメージの曲・実は…

【宇多丸】怖いまで言っちゃうか。ある意味誤解されている曲の代表格が、今流れてる「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」みたいなところもあると思いますが。これの解説後にします?

【町山智浩】これを聴いて普通にどう思います?曲だけ聴いて。
【宇多丸】曲調とか僕何にも歌詞の意味とかわからないときは、やっぱり普通にアメリカ讃歌なのかなと。しかも、その後レーガン政権のそういうテーマ的に使われちゃったりとか、色々して翼賛的な内容なのかな、最初のイメージでは思いましたね。

【町山智浩】でもね歌詞が全然違ってこういう歌詞なんですよ。

「オレは死んだような街に生まれ落ち、歩き方をを覚えてすぐ蹴り倒されて、イヌみたいに這いつくばらされて、そこからずっと立ち直ろうとするだけの人生なんだよ」という歌なんですよ。

全然地獄のような歌なんです。ね、で「オレは故郷の小さな街でちょっとしたことをやらかしちまって。ライフルを持たされて、知らない国に送り出された。黄色人種を殺すためにね」っていうね。これベトナム戦争のことですよ。

ブルース・スプリングスティーン自身はベトナム戦争に行っていないんですよね。バイクでね、この人コケて10代の時に、で脳挫傷をちょっとしてしまって、それで徴兵検査に落ちてるんですけども。

周りはみんなベトナム戦争に行ったんですよね。この人はこの歌詞に出てくるような非常に貧しいニュージャージーの工場を中心とした労働者の街に生まれ育って、そこの人たちの多くが、そのベトナム戦争に行って死んだり、その後帰ってきて仕事が無かったというですね、ものを見てきて、それをそのまま歌った歌が「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」なんですよ。

この後ベトナム戦争から帰ってきた歌の主人公は、就職しようと思ってもなかなか就職先がないとね。オレが刑務所に入ったり工場から追われたり道路工事で日に焼かれながら10年も彷徨って来たけれど、どこにも逃げ場なんてないんだと。

そこで「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」って言うんで。「アメリカに生まれぜイエー!」じゃなくて「アメリカに生まれたのに…オレアメリカに生まれたのに何でこんな苦労してるの?」っていう歌なんですよ。それをなんか全然、そういう歌詞を聴けばわかるんですけど。

歌詞が判るアメリカ人ですら誤解?

【宇多丸】アイロニーの部分はあるんだけど。
【町山智浩】あるのにレーガン大統領はその時に1984年の大統領の再選の時に、この歌を自分のキャンペーンソングとして流してたんですよ。歌詞聴けばわかるのに何故流す(笑)?

【宇多丸】そうですよね。その日本人が歌詞わからなくて思っちゃうんじゃなくて、別にだって1番、2番って続くのによくまあ。いけしゃあしゃあと。
【町山智浩】みんなそうなんですよ。だからトランプ大統領が今も前からずっとですね、選挙キャンペーンで流している曲は「悪魔を憐れむ歌」(Sympathy For The Devil)なんですよ。

【宇多丸】逆に逆にでも(笑)。
【町山智浩】「私を紹介させて貰おう、私の名前が判るかな?私はサタンだよ」って歌を流してるんですよトランプ大統領は。

【宇多丸】こっちから見ればピッタリだよって気もするけどさ(笑)。
【町山智浩】抜群の選曲だと思うんですけど、何故それを流しているのか。何故支持者達はそれを流してノッてるのかというのは。

【宇多丸】じゃあアメリカであっても歌詞を本当は聴けば判る人達でも、そこを流しちゃってる人も多いと。

【町山智浩】そうなんですよ。そういう典型的がブルース・スプリングスティーンで、今もアメリカン・ロックとかアメリカ愛国主義みたいなものと結びつけられて考えられているんですけど、実は怖い歌詞が多いんですよ。

【宇多丸】これブルース・スプリングスティーン自体はレーガンのキャンペーンの時は当然自分の曲がそんな意図に反する感じで使われて。

【町山智浩】抗議しました。反対したんですよ。でも反対してもその後も何度も色々なところで使われたりしてるんですけどね。(つづく)

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