山下達郎が7月30日に動画配信サービス「MUSIC/SLASH」でライヴ演奏を初配信することを発表した。
4500円とストリーミング配信としては高額なことがネット上で語られる一方で、山下達郎は映画上映などを除いてテレビ放映やDVD/BRソフトとしてもライヴ映像を一切出さない徹底した現場主義でも知られている。
そのため山下達郎がコロナのライヴ自粛を経て新しい試みに挑戦するという好意的な声も多い。
7月12日に放送されたJFN系列「山下達郎の楽天カード サンデー・ソングブック」で今回の配信に踏み切った経緯を語った。
山下達郎が動画ストリーミングを解禁した理由
山下達郎は次のように語っている。
今日は大切なお知らせがございます。数日前に発表になりましたので、ご存知だと思いますけれども。このたび私もですね、はじめて動画配信サービスを使ってライヴ映像をストリーミング配信することになりました。
「山下達郎の楽天カード サンデー・ソングブック」7月12日放送より
以前からいろいろと計画はしていたんですけれど、こうした時代になりましたので、ちょっと早く実現することになりました。
私この番組のお聴きのみなさまでしたらよくご存知のとおり、自分のライヴ映像をですね、映画館とライブハウス以外に公開したことがありません。テレビでも乗っけたことがありません。
ですが今回のこのウィルス騒ぎですね。このエンターテインメント業界非常に深刻な危機であります。ライヴどんなに演りたくても演れないという…。
そして、それが今んとこ、いつまで続くか判らないという…。ですので再びライヴができるようになるまでの間に違う可能性、模索しなければなりません。
ですので、それならばインターネットを介してバーチャルライヴ、いわゆる動画配信サービスを使ってリアルライヴ体験にどういう具合に肉薄できるか、どこまで再現できるか。というようなことですね、やっぱりやらなければならないと、私も挑戦してみようと思い立ちまして始めることにしました。
題して「山下達郎スーパーストリーミング」
山下達郎が動画配信サービス配信でこだわった点とは?
今回山下達郎が配信する「MUSIC/SLASH」は、イープラスで電子チケットを事前に購入する仕組みだ。
またキャプチャー不可、ダウンロード不可、外部聴きでの収録不可など強固なDRM保護技術を打ち出している。
「MUSIC/SLASH」が提供するストリーミング動画は動画 H.264(mp4) 1080pのフルHD、音声 AAC-LC 384kbps。CD音質がAAC-LC320kbpsで公式ページではBSデジタルに匹敵すると説明している。
バーチャルライヴというのはですね、いろいろなファクターがあるんですけど、一番私の重要視したのは音質のクォリティです。あとは配信パス、セキュリティーですね。
「山下達郎の楽天カード サンデー・ソングブック」7月12日放送より
あのダビングをされて、またそれをですね、あのYouTubeにあげられるとか…そういうことが凄く僕は疑問があるので「そういうことがなるべくできないようなシステムはないか」という、そういうなことをずっと模索して参りまして。
ちょうど私のライヴのプロジェクションをやって貰っております「MUSIC/SLASH」というプロジェクトがありまして。
ここの人たちがちょうどそうした音質クオリティとセキュリティが非常に強固なシステムというのを構築してくれまして、そこの力を借りてやってみたいと思います。
動画配信プラットフォーム「MUSIC/SLUSH」の独特のスタンス
数多くの動画配信プラットフォームがライヴ演奏の配信を展開中だが、今回山下達郎は初配信する「MUSIC/SLUSH」は、数ある同様のサービスとは一線を画している。
なお「MUSIC/SLUSH」そのプロジェクトの方から「伝えてほしい」との業務連絡でございますけども。
「山下達郎の楽天カード サンデー・ソングブック」7月12日放送より
これ「MUSIC/SLUSH」の方針でありまして、「MUSIC/SLUSH」では、見逃し配信はいたしません。アーカイヴも残しません。
これはリアルライヴに近づけるという思想でありまして、そのための高音質でありましてですね。普通にライヴを観るという。それと同じ「なるべくそれをに近づく体験をしていただきたい」ということなので。
たとえばポーズができないとかですね、繰り返し観れないとか。
本当の実際のライヴはポーズできませんし、繰り返して観れませんので。そうした一期一会のですね、緊張感というのを重視するというのは、この「MUSIC/SLUSH」のプロジェクトの目的であります。
その目的を実現するためにチケット販売数にあわせて配信環境を最適に構築準備するという必要がありますので、前売り券のみ7月24日の金曜日18時までの受付となっております。
当日券の販売等はありません。つまり、要するに最初から配信といいましてもですね、同じネット配信と言っても発想が違うということをご理解いただきたいと思います。
私、この発想に非常に賛同することがありましたので、この「MUSIC/SLUSH」で、最初の私のネット配信を始めようという意思を固めました。
「TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING」by「MUSIC/SLUSH」よろしくお願いします。
ネット上の反応を見ると「4500円は高い」という意見と「ライヴチケットを取るのが極めて難しい山下達郎のライヴが観れるだけでも価値がある」という意見が五分五分という印象。
DRM技術でガチガチと聞くとひと昔前は批判されがちだったが、あえてライヴ感覚の再現を目指した一種の演出として理解されているのか批判は全く聞こえてこない。
山下達郎が今までソフト化を一切して来なかったというスタンスを考えると、動画配信でさえ希少価値が生まれる。
価格設定の高さについてもその価値を納得している人たち向けと割り切った仕様であるのは確かだが、優れた映像、音質、安定した配信環境にコストをかけて臨む配信プラットフォームは、無料配信が当たり前という風潮にも一石を投じるものになりそうだ。