JFN系『坂崎さんの番組という番組』に芸人のタブレット純が出演。著書『タブレット純のGS聖地純礼』(星雲社)から広がるディープ過ぎるグループ・サウンズの世界の話は続きます。
もともと違うバンドがグループ・サウンズに変貌した時代
【坂崎幸之助】ちなみ今日タブレット純が持ってきたレコードなんでブチブチいってますけど。
【タブレット純】(「幻の乙女」のレコードは)かなり聴いたので。湯原さんもお会いしたときに「こっちの方が好きだった」とおっしゃっていたんですけれど、「雨のバラード」の方はよく聴くとサビのほうが梁瀬さんの実はリードボーカルになってて、もともとは守屋浩さんのバックバンド、堀威夫とスウィング・ウェストというホリプロの社長さんの作ったバンドだったということで。
【坂崎幸之助】随分バンドの性質が変わっちゃったんだよね。
【タブレット純】そうですね。GS時代になると。
【坂崎幸之助】そういうバンド多いよな、スパイダースも元々は堺(正章)さんとは(井上)純さんが入る前は。
【タブレット純】全然違う。
【坂崎幸之助】違っていたし。
【タブレット純】アコーディオンとかがいたというスパイダースは、ラウンジバンドみたいな。昭和35〜36年くらいから実はスパイダースも。
【坂崎幸之助】グループはあったという。
【タブレット純】ブルコメは鹿内孝さんのバックバンドだったと。
【坂崎幸之助】だいたい専属のそういうバンドだったもんね。
【タブレット純】そうですね。バックバンドは扱いというか元々は。でボーカルが3人位いてというような、何かロカビリースタイルだったという。
【坂崎幸之助】当時はね。それがバンドがメインになってきて、しかも女子中高生を相手に。
【タブレット純】はっきりしてアイドル性のあるリードボーカルがいてという。タイガースまでは学生時代の友達から自然発生したやつだったのが、ちょっとルックスだけで引き抜いて選んで、そこから演奏力も何となく、演奏もできないのに「取り敢えず失神しなさい」みたいな。
【坂崎幸之助】失神するバンドって何組くらいいたんですか? 結構いたのかな。
意外な人が元グループ・サウンズ出身というケースも…
【タブレット純】オックスがあって、取り敢えずは失神して欲しいみたいなのがあって。ホリプロのピーナッツバターというオックスに続く失神バンドを作ろうとして、そこのボーカルの中村治雄さんというパンタさんが…。
【坂崎幸之助】パンタさんがやってたの?
【タブレット純】あの、ホリプロにスカウトされて。
【坂崎幸之助】失神してたの?
【タブレット純】ブロマイドも残ってたんですけど、「こんなのやってらんない」と。
【坂崎幸之助】すげえな、それ。いやこういう元GSとかの話を、こうやってタブレット純に聞くとね「ええ、あの人が」とかというのがあるから。
【タブレット純】結構ありますね「あの人もGSだったのか」とか。
【坂崎幸之助】そういうのって、本人は嫌がるかな。
【タブレット純】当時は嫌がっていたけど、段々年とともになっては、だいたいのバンドマンの人も今回本の取材でずっとGSであることを隠していたと。やっぱり80年代とかは純然たるバンドマンでありたかったから、俺はロックだと言いたいからGSだったというのは恥ずかしいという時代がけっこうあったみたいで。
【坂崎幸之助】それがあるからね。隠すんだよね。
【タブレット純】やっぱりGSというのはロックのカテゴリーではなかったみたいで。
【坂崎幸之助】そうですよ。だからゴールデン・カップスとかね。結構ずっと拘ってバンドをやってた人もいるんだけど、それでも大きなレコード会社っていう壁があって。
【タブレット純】そうですね。
【坂崎幸之助】ゴールデン・カップスも結局ね。その曲としては「長い髪の少女」っていうのはたぶん自分たちは本意じゃなかったと思うんだけどさ。
【タブレット純】コマーシャルの曲をシングルで、全く演らなかったそうで。プロモーションしなかったのに、でも大ヒットしちゃうというのも、ある意味凄いことだなあと。
カップスに至っては「愛する君に」という次の歌があれは鈴木邦彦さんのリズム・アンド・ブルースを取り入れて、あの祐也さんも「長い髪の少女」はダメだったけれどあれはカッコいいというふうに認めていた。
【坂崎幸之助】俺も好きでしたね「愛する君に」は、大好きだったしシングルも買った。
【タブレット純】買ったんですか。
【坂崎幸之助】あの時からミッキー吉野さんが入ったのかな。
【タブレット純】そうですね。あのシングルからケネス伊藤さんが就労ビザしか持ってなかったので、一回帰らなければいけないと。
【坂崎幸之助】ベトナム戦争とか影響していた気がしたな。
【タブレット純】ゴールデン・カップもこの本で唯一現存している聖地というか。
【坂崎幸之助】そうか、ゴールデン・カップというのはちなみにお店の名前でね。ゴールデン・カップスが出てた。
【タブレット純】元々グループ・アンド・アイという名前だったのが、この店から出たということでゴールデン・カップにして、マスターが80〜90歳近くなっていて。
現役のマスターだったんですけど、インタビューしたら全部「俺はもう知らん、音楽のことわからんから」って(笑)。殆どインタビューに…「オンナのケツを追いかけてたから俺は知らん」って、それだけだったんですけど(笑)。
タブレット純がバンドマン挫折を決意したあるグループ・サウンズの存在
【坂崎幸之助】この本に書かれてるタブレット純が挫折したほど上手かったバンドがいると。これはどこの項で書いていたっけ?
【タブレット純】原宿クロコダイルですね。今でもクロコダイルは有名ですし。今の店長が西 哲也さんというエムという伝説のバンド。浅野孝巳さんというゴダイゴを作る(人もいた)、もともとは安岡力也さんが店長だったという店なんですけど。クロコダイルも現役で、僕はバンドで出たはじめての、マヒナスターズが自分の原点なんですけど、はじめてロックバンドみたいなので。
【坂崎幸之助】マヒナじゃなくて。
【タブレット純】終わって10年くらい経った頃で、東京に出てきてはじめてそのバンドでやってみないかということで。それで出たお店だったんですけど。そこからハプニングス・フォーのペペ吉弘さんというベーシストの方と知り合いまして。ちょうどハプフォーが復活をする再結成するということでジョイントライブをやるということになりまして、僕はひとりで演ったんですけど、余りにもカッコよくて、あまりの自分の不甲斐なさに(笑)、もう完全にやめたと。
【坂崎幸之助】メゲた?
【タブレット純】メゲて、その帰り道でお酒をあおって、翌日吉祥寺のいせやのカウンターで「完全にやめました」と兄に電話をして、兄は日野自動車で働いているのでドライバーにでもなろうかと、それくらいショックを受けたバンドが…。
【坂崎幸之助】ハプニングス・フォー。 クニ河内さん、チト河内さん。
【タブレット純】後々の70年代の音楽シーンもすごい多大な功績を。
【坂崎幸之助】僕らがキャニオンに移ってからの最初のアレンジもクニ河内さん。
【タブレット純】そうですね、そういえばアルフィーも。
【坂崎幸之助】チトさんはトランザムですよね。(吉田)拓郎さんのバックも新六文銭やったりとか。
【タブレット純】色々なスタジオの音もね。
【坂崎幸之助】その時もチトさんとクニさんもいらしたんですか?
【タブレット純】いました、凄いハプフォーの…。
【坂崎幸之助】めっちゃ上手かったですか?
【タブレット純】めっちゃ上手くてカッコよくて(笑)。やっぱりハプフォーというと玄人好みというか。
【坂崎幸之助】そうだね代表曲でも『あなたが欲しい』は大ヒットではなかったもんね。
【タブレット純】大ヒットではないけどという。
【坂崎幸之助】ちょっと渋いバンドでしたね。
【タブレット純】アングラな匂いがかなりするという。
【坂崎幸之助】こちらは女子中高生じゃないよね。
【タブレット純】そうですね(笑)。一応ナベプロにいたということで。タイガースのバックでやっていたようですけど。
【坂崎幸之助】じゃあ今日時間なくなっちゃったから来週も、この続きで。
【タブレット純】ぜひお願いいたします。
【坂崎幸之助】ぜんぜん時間足りねえもんな。はい宜しくお願いします。一応お別れの曲はそのハプニングス・フォーの『あなたが欲しい』じゃなくて、そちらはその次の曲ですね。
【タブレット純】これもほんのちょっとヒットしたのかな。坂崎さん覚えてれば嬉しいんですけど、ちょっと異様な曲というか…。ハプフォーならではの不気味な感じすらする曲なんですけど。
【坂崎幸之助】プログレ的な。
【タブレット純】色々と凝った曲じゃないかと。
【坂崎幸之助】これはクニさんですね。作詞作曲だ。この曲を聴きながらタブ純さんとはとりあえずお別れでまた来週お願いします。じゃあ曲紹介してください。
【タブレット純】ハプニングス・フォーで『君の瞳を見つめて』。
【坂崎幸之助】ありがとうございました。(つづく)