かきおこしラボ

ラジオで紹介された音楽を深掘り〜聴き放題サブスク用ライナーノーツ風ブログ

MUSIC

細野晴臣・伊藤ゴローが語るジョアン・ジルベルト(4)

投稿日:

インターFM「Daisy Holiday!」でジョアン・ジルベルトの追悼特集第2週目(2019年10月13日放送)。最後まで伊藤が「3月の水」にまつわる自身の考察やジョアン・ジルベルトの音楽にまつわるトリビアを披露した。

ジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンの「3月の水」

【伊藤ゴロー】何聴きます?
【細野晴臣】聴きたい曲はいっぱいあるよ。

【伊藤ゴロー】そうですね、そうですね。
【細野晴臣】でも無いんだよね。何かあるこれ聴いてほしいというのは。

【伊藤ゴロー】何がいいですか…。
【細野晴臣】例えばかけたいのは僕あの…「Águas de Março」
【伊藤ゴロー】アグオス・ジ・マルソ、行きます。「3月の水」5分24秒あります。

【細野晴臣】長いねえ。他の人のはみんな2分台なんだよな。
【伊藤ゴロー】そうなんですよね。演り始めると止まらないんですよねこの人。
【細野晴臣】マルソか、マルコって読んでたよ嫌になっちゃうな(笑)。

【伊藤ゴロー】マルコでも。
【細野晴臣】ポルトガル語とスペイン語って微妙に違うじゃない。スペイン語だとフォアンになっちゃうよね「ジョアン」じゃなくて。
そうですねフォアン。

【伊藤ゴロー】「de」が「ジ」って発音なんです。
【細野晴臣】なるほど…勉強しよう。じゃあ「Águas de Março」。これはアントニオ・カルロス・ジョビンの曲ですね。

【細野晴臣】この曲についてゴローくん何か思うところがあると。

【伊藤ゴロー】思うことというか、僕が勝手に思い馳せてることがあって。話すと長くなるので、掻い摘んで(笑)。

この曲の後半、ハーモニーが変化してコーダ的な展開があるんですけど。実はこのレコーディングは、「3月の水」のレコーディングは、ジョビンよりジョアンの方が先なんです。

【細野晴臣】ええ、それは知らなかった。そう。
【伊藤ゴロー】もともとのプロトタイプの「3月」なんです。でそれはブラジルでジョアンがレコーディングしてるんですよ、シングルのような形で。

【細野晴臣】知ってるそれは、それは残ってないんじゃないの?
【伊藤ゴロー】一応あるんですけど、当時ダブルシングルというか、他のアーティストと一緒のシングルがあって、それが一番最初なんですけど。それ以降はジョアンのこのバージョンのレコーディングの方が先なんですよね。

【細野晴臣】それは知らなかったな。
【伊藤ゴロー】そのプロトタイプの「3月の水」はコーダ的なハーモニーの変化が無いんですよ。
【細野晴臣】もっとシンプルな訳ね。

「3月の水」のハーモニーはジョアン・ジルベルトのアイディア?

【伊藤ゴロー】それはジョアンがやった、もしかしたら。ここはジョアンのアイディアだったのではないかという…。かなり独りよがりな。
【細野晴臣】いやあ、そういう話好きだな。

【伊藤ゴロー】僕、もしかしたらジョアン・ジルベルトがジョアンに対して、こんなアレンジというか「こういうのはどうだ」というメッセージだったのではないかという、もの凄い仮定を…。

【細野晴臣】ジョビンとジョアンというのは、凄く親密なんでしょ?
【伊藤ゴロー】そうですね。ただ本当に初期の頃、「イパネマの娘」『ゲッツ/ジルベルト』以降は、交流ないんですよ実は。

【細野晴臣】そんな前から。
【伊藤ゴロー】ただジョアンはジョビンの曲はずっと取り上げていた訳ですよね。なので2人の間には、音楽でのやり取りというか…。

【細野晴臣】会わなくても。
【伊藤ゴロー】ジョビンもジョアンのために曲を作ってただろうし、ジョアンもジョビンのメッセージをちゃんと答える形でレコーディングしていた。
【細野晴臣】それはそうと思うよ。

【伊藤ゴロー】それはDVD(ジョアン・ジルベルト『ライブ・イン・トーキョー』)にも書いたんですけどね。
【細野晴臣】皆さん読んでくださいね。貴重なものだからね、このDVDは宝物ですよ。

じゃあね、これも長い「イザウラ」(Izaura)凄い好きなんだよな…いいすかこれで。これで最後かな曲は…ジョアン・ジルベルトさん安らかにお眠りくださいという。いつかまたやりましょうね。

【伊藤ゴロー】ぜひ。
【細野晴臣】伊藤ゴローさんでした、どうもありがとう。

最後に…ジョアン・ジルベルト「イザウラ」のパーカッションの秘密

【伊藤ゴロー】(曲を聴きながら)このパーカッションの秘密というか…話をするのを忘れた(笑)

【細野晴臣】秘密があるの?
【伊藤ゴロー】奥さんのミュウシャがブラジルに行ったときに、「これ何を叩いてるんだ?」と訊いたんですよ。ハイハットじゃないし、そうしたら「ザル」って言ったんです。要はキッチンにある台所にある金のザル。

【細野晴臣】金のザルか…。
【伊藤ゴロー】ザルをブラシで叩いてるっていってたんですよ。

【細野晴臣】ほほーう。本当、面白いね。
【伊藤ゴロー】ザルだったんですよね…。

【細野晴臣】それは、よく判るは、僕も灰皿叩くし。
【伊藤ゴロー】色々なもの叩きますよね(笑)。この音出したくて色々なもの叩きましたよ。

【細野晴臣】ザルは叩いた?
【伊藤ゴロー】ザルは叩きませんでしたね。ブラジル人に聞いたら「電話帳がいいんだよ」って言ってて、やってみたんですけど「ブラジルの電話帳じゃないと駄目なのかな、タウンページじゃ駄目なのかな」と(笑)。

【細野晴臣】鉄のザルってあんまりないよな。
【伊藤ゴロー】当時なんで鉄のザルのほうが主流だよねきっと、台所用品。とにかく息が長いですよ、びっくりするほど長いですよね。

【細野晴臣】凄い肺活量。
【伊藤ゴロー】ひと息でずっとブレスしない。
【細野晴臣】できないよ。タバコ吸うし。
【伊藤ゴロー】(笑)。(おわり)

notfaleawaySQ_ad01




notfaleawaySQ_ad01




-MUSIC
-, ,

執筆者:

関連記事

上原ひろみ10年ぶりのピアノソロ作発表(1)最近ハマっている音楽とアーティスト

ジャズピアニスト・上原ひろみがJ-WAVEの番組「SAPPORO BEER OTOAJITO」に出演。最近聴いている音楽や、10年ぶりのピアノ・ソロアルバム『Spectrum』について語った。 新作は …

ボブ・マーリーの肖像画

Char「音楽観が変わった」1979年のボブ・マーリー体験を明かす「高いところに向かって、みんなで上がっていくという感じが凄いした」

J-WAVEの特番「J-WAVE SPECIAL」(10月22日放送)に、Charが電話出演。ライブミュージックがテーマの番組で、1979年のボブ・マーリーの来日公演を観たCharがその衝撃的な体験を …

松任谷由実が語る60年代当時の東京の音楽シーンと当時の洋楽へのアクセス方法

J-WAVE「RADIO DONUTS」に松任谷由実が出演。デビューのきっかけや70年代の東京の音楽シーンについて話した。 デビューのこと初恋の人のこと 【渡辺祐】ユーミンの過去のお話も伺っていきたい …

世界が注目ナイジェリアのオルテシーンの注目アーティストLADY DONLI(レディ・ドンリ)

TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』で2020年7月は「アフロポップのイマがわかる4曲」と題して、音楽ライターの吉本秀純さんが選曲、2回目(7月14日放送)はLADY DONLI(レディ・ド …

矢沢永吉×矢沢洋子 父娘対談(5)歌詞を書かない理由「メロディが降りてくるんだって判るけど詞は降りてこないんだもん」

NACK5の矢沢洋子「generock by yoko yazawa」の第2週目。矢沢永吉・洋子の親子対談。今回は歌詞に関する話題です。 【矢沢洋子】今回のミュージックビデオを観せてもらって、ジャケッ …