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「もしビートルズがいなかったら」(3)亀田誠治、スティーブ・ジョブズ…幅広く波及するさまざまな影響 西寺郷太が解説

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映画『イエスタデイ』日本での公開を前に「もしもビートルズがいなかったら」をテーマに放送されたJ-WAVEの「J-WAVE SELECTION THE WORLD WITHOUT THE BEATLES」。さらに深掘りしてNONA REEVES・西寺郷太がビートルズが世界に与えた影響についてトークした。

ベースの概念を変えたポール・マッカートニーというスーパースター

【サッシャ】音楽プロデューサー、亀田誠治さんのコメントをもとにお話をしていますが、ビートルズが音楽業界を変えた革新的な出来事、3つ目は亀田さん何でしょう?

【亀田誠治】ビートルズの曲ってね、とてもキャッチーだと思うんです。このキャッチーには実は秘密があるんです。

今回の映画『イエスタデイ』のタイトルにもなっていますけど、例えば「イエスタデイ」という曲がありますけれども、入り口は「Yesterday」と始まりまり「I belive inYesterday」って、サビの始まりが「イエスタデイ」という歌詞で始まって、サビの終わりも「イエスタデイ」で終わるんです。

これはキャッチー、でもう一個「Let It Be」もそうです、これがね。特にポールの作っている曲にこの傾向が多いんですけど、もの凄くシンプルな歌詞、メッセージが凝縮されているんですね。

で聴き手はメッセージが凝縮されているから、凄く自分の日常に置き換え易いというか「イエスタデイ悲しいことがあったんだな、そうだな俺のイエスタデイも悲しかったよ」「レット・イット・ビー…そうだな、なすがまま、なすがままだ、そうそうなすがままに行けばいいんだ、レット・イット・ビーと言ってくれたよまた」みたいな、こういう判り易さっていうのがビートルズの曲をですね。

ずっと色褪せずにキャッチーな楽曲としてずっと永遠に愛される理由になっていると思います。

【サッシャ】キャッチーさも当然ながらポップスですから、ビートルズの良さの一つだというふうに亀田さんはおっしゃってました。西寺さん、ソングライターとして見たときに、改めてビートルズの凄さ、ビートルズがいなかったらと思うと、どうですか?

【西寺郷太】そうですね。亀田さんは優れたベーシストで、優れたプロデューサーですけど、ベースに注目しながら音楽が進んでいく、ベースが低音を支えるだけじゃなくて、音楽により深みを与えるというアプローチを、亀田さんはベーシストなのでされるんですけど、それがポールの存在によって影響を受けたベーシストって凄く多いと思いますね。

だからベースというのがリズム楽器、低音を支えるだけじゃなくて、音楽的な作曲とかプロデュースの一つのすごい武器になるということを、ポールは示したと思うんですよ。どうしてもロックバンドをやる時に、それまでギターとかボーカルが主人公だったんですけど、もしくはドラムですね。

ベースってどちらかというと、地味な楽器だと思われていたんですね。でもそこにベーシスト、ポール・マッカートニーというスーパースターが登場したことで、音楽がより深みがあり、音楽が凄く面白くなり、そして優れたプロデューサーがたくさん生まれてきたということは、今亀田さんの話を聞いて感じましたね。

【サッシャ】確かにポールがメンバーの中でも唯一音楽的な家庭の出身で、ギターを弾いてたけどしょうがないからベーシストになったみたいな。

【西寺郷太】スチュアート・サトクリフという方が辞めて「俺のほうが上手い」みたいなね。そうですね、それは一つビートルズを決定づけているポイントだと思いますね。

【サッシャ】それがギタリストだったら違っていたかもしれない。
【西寺郷太】そうなんですよね。

【サッシャ】まあビートルズがいなかったら亀田さんも存在してないかもしれないと。椎名林檎さんも、いないかもしれなくて、そうすると色々なものが無いかもしれないということですけど、ビートルズいなかったらNONA REEVESは? 存在してないんですかね。西寺郷太さんはミュージシャンになってないのかな。

【西寺郷太】僕『ビートルズ・レコーディングセッション』という名著がありまして、それをね死ぬほど読んでいたんですよ。当時ネットも子供の頃なかったので、そういう本が一つのビートルズのやってきたことのピンポン録音を自分でやったですよね僕は。ラジカセを使って。

【サッシャ】2トラックを1個にまとめて、空いたトラックももう1個を入れて。
【西寺郷太】そうなんですウォークマンとかで、それもやっぱりビートルズの真似を予算のない中で、やっていってカセットテープになり逆回転したりとか。

だから本当にレコーディングという意味で言うと、全くもってそうかもしれないですね。そのアビイ・ロードに行ったことも一つの決意になりましたし、ノーナはかなり平等に競い合いながら演奏しているというところもあって、そういう意味ではビートルズは、無かったら組めてないかもしれないですね。本当に感謝していますね。

ビートルズとアップル・コンピュータの音楽界への間接的な貢献

【サッシャ】そうするとアップルのスティーブ・ジョブズも、大のビートルズ・ファンで、そもそもね…。

【西寺郷太】アップルって名前使ってますからね。酷い(笑)ある意味酷いですよ、だってアップルって会社なんだもんビートルズの(笑)

【サッシャ】ビートルズの作った会社がアップル・コープス(Apple Corps Ltd. )、アップル・レコードだった訳ですよね。で最初アップルはアップル・コンピュータだったんだけど、今はアップル・インクになって、その時に相当ビートルズ側に許諾を得て会社名を変えたと。

【西寺郷太】凄いと思いますよ。「そのまんまかよ」という話で、僕だったらパイナップルとかにしますけどね(笑)。
【サッシャ】でも林檎のマークが良かったんだろうね。

【西寺郷太】パイナップルのマークで憧れを表せばいいのにと思ったけれど、本当に僕も今ProToolsだったり、その前の家で作ってるのはマックを使ってロジックってソフトで、それはアップルが買ったんですけどロジックというソフトを、だからアップルのお陰で曲が作れてるんで、色々な意味で繋がっているというか、結局その今のミュージシャンにも凄い助けて貰っているという気がしますね。間接的にですけどね。

ビートルズのいない世界に自分が存在していたらどうする?

【サッシャ】どうでしょう、この映画『イエスタデイ』では、主人公はミュージシャン、売れないミュージシャンです。唯一自分だけがビートルズを知っている、そこでビートルズ演奏することによって凄いと思われる。でもそれで見えてくる世界。

【西寺郷太】それは何気なく歌うんですか?
【サッシャ】最初は何気なく歌うんですよ。誰も知らない訳ですよ。
【西寺郷太】で「ええ曲やん」と。

【サッシャ】そう、「それいいね」ってことになる訳ですよね。
【西寺郷太】「え?ビートルズやん」って言うんですよね?
【サッシャ】そうすると「何ビートルズって?」ということになる訳ですよ。西寺さんもし主人公だったら? 自分の曲としてビートルズを発表し続けますか?

【西寺郷太】それって僕まだ観ていないのでわかりませけど、嘘ついてる訳じゃないですか。
【サッシャ】まあ自分が考えたってことになる訳ですよね。
【西寺郷太】なりますよね。それはその人はどう思うんですか? 映画の中では。

【サッシャ】歌うんだけど葛藤もするんですよね。
【西寺郷太】ああ、そうですね。いや、演るんじゃないですかね、やっぱり。だっていい曲ですもんね。自分でというのは想像しずらいのはありますけどね(笑)。

「イエスタデイ」って俺がいきなり歌っても「何で?」ってなる可能性はありますけどね。「夢で聴こえたんだ」って僕いいますけどね、そうしたら(笑)。「他の人が作ったかもって思ったんだ」って言います。

【サッシャ】それも誕生秘話ですよね。
【西寺郷太】でも、ポールだって言ってましたよ。「この曲知らない?この曲知らない?って言ってたら、俺の曲かもしれないと思った」って。ポール・マッカートニーって実はそういう人だったりしてね。誰かの曲を(笑)

【サッシャ】僕らがみんな知らないアーティストが実はいて、ポールだけそのアーティストを知っていて、ポールは全部そのアーティストの曲を自分の曲として発表してるだけの人かもしれない。僕らは『イエスタデイ』の世界に生きているかもしれない。

【西寺郷太】でもジョン・レノンもマイケル・ジャクソンも同じようなことを言ってたんですけど、「僕が曲を作っているんじゃない、降りてきてるものをキャッチしているだけだ」って言うんですよね。

【サッシャ】そういうのが映画の発想の原点にあるのかなあ。
【西寺郷太】あのジョン・レノンは「僕は曲は作ってない。空中にあるものをキャッチしているだ」って、その言葉をマイケルも、僕行きましたけど、自分のスタジオの壁に掘ってましたから。

【サッシャ】へえ。
【西寺郷太】その文字をくっつけて読めるようにしていたんですよ。ちょっと石碑みたいな見た目感じですけど。文字をくっつけてたんですね、ジョン・レノンの言葉を。それはミイラを発掘するじゃないですけど、掘っていって出してくるみたいな。だから感覚としては判りますけどね僕も。

【サッシャ】想像を絶するので『イエスタデイ』で。また観てから、今聴いてるリスナーも含めて考えて頂きたいと思います。じゃあ、どうですか、観たくなりました?

【西寺郷太】めちゃめちゃ観たくなりましたね。やっぱり「Do It Yourself」ってことですよね。自分でやっちゃうという。

何もかも、本当の専門家じゃなくても。それは凄い色々な人に勇気を与えたと思うので、僕もまさに「自分でやろう」ってところは教わったし、本当にそれまでの世界はこの世界のプロ、この世界のプロってのの協力でものが成り立たないと思い込まされていたと。

多分ダニー・ボイル監督もそういうところへの感謝があるんじゃないですかね。インディ精神というんですかね、無理だと言われてもやるという。(おわり)

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